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中学生記者文化財取材コンクール 受賞作品
記事の部
平成十七年 京都市長賞 「葵の頃にもう一度」
京都市立桃山中学校二年 岩村 芙美香
ザクザクザク・・・。道を行き交う人々の落ち葉を踏む音が、聞こえる。
サワサワサワ・・・。頭上で高く広く枝を広げる木々の風に葉をかき鳴らす音が、聞こえる。
十二月三日、冷たい雨の中、文化財を取材するために私達は下鴨神社を訪れた。糺の森をぬけると、朱と白の鮮やかな楼門が目に入る。まず初めに本殿を見学させていただいた。木造で、ずっしりと重みがあって、それでいて温かい。コンクリートとは全く違うように感じたのは、木々の命のぬうもりがあるからだろうか。生きている、と思った。平安時代から守られ、変わる事のない形はやはり美しい。屋根の形も興味深く、後ろ屋根が前屋根より長い。流れ造というつくりだ。両脇を守る青と緑の狛犬もおもしろい。屋根の力強い曲線と真っすぐな木の美しさが無彩色な雨の中で映えて、今も心に残っている。本殿には賀茂建角身命とその娘、玉依媛命がまつられている。また、鴨川の上流に位置する上賀茂神社には玉依媛命の子がまつられている。2つの神社にいる親子は賀茂川によってつながる。私には川の水がへその緒のように思えた。
下鴨神社は神秘的な土と水の香漂う糺の森に囲まれている。神主の嵯峨井さんは語る。
「糺の森があって良かった。ここに戻ってくると、ほっとするんですよ」
糺の森は壮大な森だ。約一二〇〇年前の京にどんな木や草花が生えていたか知る事ができる。また、万葉集にも書かれている植物、何十種類がまだ生きているという。まさに植物の宝庫だ。糺の名の由来は多くの説がある。真っすぐ突き出した州の直州,清らかな泉が湧き出る事の直澄、そして物事を正す、から変化した「糺す」だ。
私はこの説に一番心ひかれる。糺の森は本当に不思議で興味深い森なのだ。大木が空に向かって枝をのばし、葉を広げて天井を作っている。時雨の降る白い空から時々こぼれ落ちてくる日の光が葉の天井を突き抜けて私の元に届く。そんな時、ふと平安時代からの時の流れが私のすぐそばにある気がして、冷たい空気をそっと握った。目を閉じたらタイムスリップできる気がした。
雅楽と共に十二単の着付けが始まった。ひちりきの定まらない音が、凛とした空気の中で震える。萌黄、赤、淡紫、桃。様々な色の単が重なり合って一つの作品、十二単になっていく。重なる衣は十二枚とは限らず二十枚近くにもなり、肩に着物の重みがずっしりとかかる。それでも平安時代を生きた女性達は色を重ね続けた。自分の魅力をアピールするために、美しさに努力を惜しまなかったのだ。
たくさんの色が重なって成る十二単のようにたくさんの人々の美しいと感じる心が下鴨神社を支えてきたのだと思う。そして受け継がれてきたものを守ろうとする人達がいるからこそ変わらぬ美しさが今も存在する。今を生きる私達が、日本の文化を支えたい。王朝文化の源流を訪ねに、糺の森を歩いてゆこう。そして今度は葵の頃にここを訪れたい。
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